生後数ヶ月を迎えた我が子を前に、大人がおどけて舌を突き出す「べろべろばぁ」。声を上げて破顔する赤ちゃんの姿に、驚きと愛おしさを覚えた経験を持つ保護者は少なくありません。昭和から令和に至るまで、親子のふれあい遊びの定番として親しまれてきたこの原始的なあやし言葉は、単なる思いつきのジェスチャーではなく、乳幼児の発達心理学や認知科学の観点からも極めて合理的な刺激であることが近年の研究でも裏付けられています。
さらに、この日常のやり取りを鮮やかなアートとナンセンスなユーモアへと昇華させ、四半世紀以上にわたり書店の児童書コーナーで異彩を放ち続けているのが、鬼才・佐々木マキ氏が手掛けた絵本『べろべろばぁ』(福音館書店)です。「なぜ赤ちゃんがこれほど夢中になるのか」「王道の『いないいないばあ』と何が違うのか」――2026年現在の育児現場や発達研究の最新知見を交えながら、大人をも惹きつけるロングセラー絵本の真髄と、家庭で実践できる効果的なあやし方の深層に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:赤ちゃんが舌を出す動作に爆笑する背景には、乳児特有の「新生児模倣」と「予測の心地よい裏切り」という発達心理的メカニズムが存在する。
- 要点2:佐々木マキ氏による名作絵本『べろべろばぁ』(福音館書店)は、脱力感のある造形美とリズミカルな反復で、0歳児から自発的な笑いを引き出す。
- 要点3:「いないいないばあ」が対象の永続性を刺激するのに対し、「べろべろばぁ」は表情の変形による緊張と緩和を味わう遊びであり、月齢に応じた使い分けが効果的である。
【解明】赤ちゃんが大爆笑する秘密|なぜ「舌を出す」姿に夢中になるのか
赤ちゃんがあやし手の「べろべろばぁ」に対して目を輝かせ、時に声を出して大爆笑する現象は、小児科医や発達心理学者の間でも興味深い観察対象として語られてきました。大人から見れば単なる「変顔」に過ぎない行為が、なぜ乳幼児の脳をこれほど強く刺激するのでしょうか。
その鍵を握るのが、生後間もない時期から備わっているとされる「新生児模倣」と、生後6ヶ月以降に急激に発達する「顔認知の柔軟性」です。乳児は人間の顔、特に目と口の動きに対して並々ならぬ執着を示します。普段は閉じているか、授乳や発声のために穏やかに動いている口元から、突如として鮮やかな赤みを帯びた「舌」が飛び出してくる現象は、赤ちゃんにとって視覚的なインパクトが極めて大きいサプライズとなります。
さらに、発達臨床の現場では「緊張と緩和のサイクル」が指摘されています。「何かが起きるかもしれない」という期待を含んだ大人のタメ(予兆)から、一気に「べろ〜」と脱力した舌が現れる瞬間、赤ちゃんの脳内では予測が快く裏切られます。この認知的ギャップが快感情のスイッチを押し、弾けるような笑いとなって表出するのです。赤ちゃんが自ら舌をペロペロと出す理由も、大人の表情を真似ようとするコミュニケーション意欲(共鳴動作)や、口腔内の感覚器官を確かめる探求行動の一環であり、心身の発達が順調に進んでいる証左と言えます。
佐々木マキ作『べろべろばぁ』の魅力とあらすじ|福音館書店が誇るロングセラー
このシンプルかつ強力な身体的コミュニケーションを、唯一無二の絵本世界へと落とし込んだのが、福音館書店の「あかちゃんのとも」シリーズ(0.1.2.えほん)から刊行されている佐々木マキ氏の絵本『べろべろばぁ』です。村上春樹作品の装画や『やっぱりおおかみ』などの前衛的な作風で知られる佐々木マキ氏が、乳幼児向けに紡ぎ出した本作は、一般的な「可愛らしさ」を前面に出したあかちゃん絵本とは一線を画しています。
本作のあらすじは極めて明快です。ページをめくると、どこか飄々とした愛嬌を持つ動物やキャラクターたちが次々に登場します。最初は澄ました顔をしていますが、次の見開きで思い切り「べろべろ ばぁ」と個性豊かに舌を突き出します。登場するキャラクターの表情は媚びることがなく、どこかシュールで脱力感に満ちており、この独特の「間(ま)」が読者を惹きつけて離しません。
福音館書店が本作を単行本として世に送り出して以来、数多くの保育所や子育て支援センターの現場で定番の1冊として選ばれ続けてきました。過度な説明を排し、色彩のコントラストとリズミカルな擬音だけで構成された画面は、視覚情報がまだ未発達な生後7〜10ヶ月前後の乳児にとっても認識しやすく、読み手の声のトーンと合わさることで爆発的な没入感を生み出します。
【徹底比較】「いないいないばあ」との決定的な違いと心理的効果
あやし遊びの金字塔といえば松谷みよ子氏の『いないいないばあ』(童心社)に代表される「顔を隠して現す」動作ですが、「べろべろばぁ」とは心理的・知覚的アプローチにおいて明確な違いが存在します。両者の構造的な差異を理解することで、子どもの発達段階に応じた適切なアプローチが可能となります。
| 項目 | べろべろばぁ(佐々木マキ) | 一般的な「いないいないばあ」 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 認知的メカニズム | 形態変容と予測の裏切り(変顔・ナンセンス) | 対象の永続性(見えないものが存在する理解) | 刺激する脳の認知機能が異なるため併用が理想 |
| 笑いのトリガー | 視覚的なギャップ、親の脱力した滑稽さ | 再出現の安心感、遮蔽からの解放 | 「べろべろばぁ」の方が直接的・衝動的な笑いを誘発しやすい |
| 推奨対象年齢の目安 | 生後7〜8ヶ月頃〜2歳以上(模倣が盛んな時期) | 生後5〜6ヶ月頃〜1歳半頃(追視が安定する時期) | 舌を真似て出し始める離乳食中期以降に親和性が急上昇 |
| 心理的効果 | 自己肯定的なリラックス、身体感覚の模倣学習 | 愛着関係の再確認、分離不安の軽減 | 日常の緊張をほぐすアイスブレイクには前者が秀逸 |
「いないいないばあ」は、ジャン・ピアジェの発達理論でいう「対象の永続性」(視界から消えても存在し続けているという確信)を遊びの中で確かめる行為です。これに対して「べろべろばぁ」は、顔という確固たる対象物が存在したまま、一部分がユーモラスに歪むプロセスそのものを楽しむ知覚的アクロバットです。恐怖心を抱かせずに「いつもと違うパパ・ママの顔」を見せることで、子どもは安全な環境下でのスリルと安心を同時に味わうことができます。
【実態検証】保護者の口コミ・評判から見る子どものリアルな反応
SNSや育児コミュニティ、大手書評サイトに寄せられた膨大なレビューを分析すると、絵本『べろべろばぁ』を巡る赤ちゃんの反応には、いくつかの共通したパターンが見られます。現場のリアルな声を検証すると、単に「ウケが良い」という言葉だけでは片付けられない、乳幼児特有のドラマが浮かび上がってきます。
「生後8ヶ月の頃、何を読んでも無反応だった息子が、この本の『ばぁ』のページで初めて声を上げてケラケラ笑った」(30代母親の投稿手記より)という声は典型的な一例です。一方で、最初は「じっと凝視して眉間にシワを寄せていた」という慎重派の乳児も少なくありません。登場するキャラクターの風貌が一般的なパステルカラーの愛玩動物ではなく、佐々木マキ氏特有のペーソスを帯びているため、乳児なりに「これは何者か」を品定めしている様子が窺えます。
また、1歳を過ぎた頃からは「読み聞かせに合わせて、子ども自身が真っ赤な舌を突き出して親の顔を覗き込んでくる」という双方向の遊びへと進化するケースが目立ちます。ネット上の口コミでも「家族全員で舌を出し合って笑い転げた」「イヤイヤ期のぐずり対策として、この本の一節を唱えながら舌を出すと一瞬で泣き止む」といった実践的な評価が数多く確認されており、親子の強固なコミュニケーションツールとして機能していることがわかります。
読み聞かせのコツと効果的なあやし方|いつから始めるべきか
絵本『べろべろばぁ』の対象年齢は、福音館書店の公式分類では「0歳から」とされています。ただし、視覚や認知の成熟度を考慮すると、本格的に効果を発揮し始めるのは生後6〜8ヶ月頃からと捉えるのが実態に即しています。この時期になると、大人の表情の機微を読み取り、自らの舌をコントロールして出す動作が連動し始めるためです。
家庭で実践する際の読み聞かせのコツは、次の3点に集約されます。
第一に、「溜め」の演出です。ページをめくる直前の「べろべろ…」の段階では、声のトーンを少し潜め、じらすように間を取ります。そしてページをめくると同時に「ばぁ!」とワッと明るく発声し、読み手自身も絵本のキャラクターと同じように舌を突き出してみせます。この静から動への落差が赤ちゃんの笑いを増幅させます。
第二に、絵本を顔の高さに合わせて配置することです。赤ちゃんは絵本のイラストと、読み聞かせをしている親の実際の顔を交互に見比べながら認知を深めていきます。「絵本の中のキャラクターが舌を出した」直後に「目の前の母親・父親も同じ顔をしている」という二重の刺激を与えることで、模倣行動への誘発が格段にスムーズになります。
第三に、無理強いをしないテンポ感です。もし赤ちゃんが怪訝な顔をしたり、後ずさりするような仕草を見せたりした場合は、大げさに舌を出すのを控え、優しく微笑みながら「びっくりしたね」と言葉を添えるのが賢明です。過度な刺激は刺激過多(オーバースティミュレーション)を招き、逆効果となる場合があるため、子どもの視線と呼吸に合わせる配慮が求められます。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
育児情報サイトやSNS上のやり取りを見渡すと、「べろべろばぁ」に対して一部で根拠のない誤解や不安が散見されます。その最たるものが、「頻繁に舌を出すあやし方をすると、人前で舌を出す行儀の悪い子に育つのではないか」という懸念です。
しかし、小児発達の観点から言えば、乳児期(0〜1歳代)の模倣や舌出し遊びが、幼児期以降の社会性やマナーの悪化に直結するという科学的根拠は一切存在しません。むしろ、この時期に「顔の筋肉を自在に動かす」「大人の表情に反応して同じ動きを返す」という経験を積むことは、将来的な言語獲得(調音器官の発達)や、他者の感情を汲み取るミラーニューロンシステムの活性化にとって極めて有益なトレーニングとなります。
また、「絵本を見せても全く笑わないから発達に問題があるのではないか」と過度に悩む保護者の声も聞かれます。乳幼児の笑いのツボや刺激への耐性には大きな個人差があります。視覚的な変化よりも音の響き(聴覚)に敏感な子どももいれば、身体的な接触(くすぐり遊びなど)で初めて笑う子どももいます。絵本『べろべろばぁ』で笑わないからといって決して焦る必要はなく、数ヶ月後に再挑戦した途端に大爆笑するといったケースも珍しくありません。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
本作品および「べろべろばぁ」遊びの導入にあたっては、子どもの気質や家庭のシチュエーションに応じた見極めが有効です。
【強くおすすめできる家庭・お子さま】
・生後7ヶ月を超え、大人の顔をじっと見つめたり、真似をして口を動かしたりする兆候がある。
・従来の「いないいないばあ」に慣れてしまい、あやし遊びがマンネリ化している。
・パパやパートナーが育児に関わる際、どうやって子どもとスキンシップを取れば良いか悩んでいる(身体一つで完結するため、導入のハードルが極めて低い)。
・型通りのメルヘンな絵本だけでなく、少しシュールで遊び心のある良質なアートに触れさせたい。
【導入に慎重になるべきシチュエーション】
・生後2〜4ヶ月前後の極めて初期の段階(視覚の焦点が合いにくく、意図が伝わりづらい)。
・子どもが眠気や空腹、体調不良で不機嫌になっているタイミング(急激な表情変化が恐怖やパニックを引き起こす恐れがある)。
・極度に怖がりで、大人の大声や急激な身振りに対して激しく泣き出してしまう気質の乳児(最初は舌を出さず、絵を見せるだけの静かな導入が推奨される)。
【べろべろ ば ぁ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:絵本『べろべろばぁ』は何歳から何歳まで楽しめますか?
A1:公式の適齢は0歳からですが、最もリアクションが大きくなるのは生後7ヶ月から1歳半頃です。しかし、言葉の意味がわかる2〜3歳児であっても、「変顔の面白さ」や「自分で読んで大人をあやす遊び」として長く親しまれており、息の長い楽しみ方が可能です。
Q2:赤ちゃんが自分から頻繁に舌を出すのは何かの病気のサインですか?
A2:多くの場合、生後数ヶ月の赤ちゃんが舌をペロペロと出すのは、自分の身体のパーツを確認する遊び(ハンドリガードに似た感覚探求)や、唾液の分泌量増加、または喃語の前段階としての正常な生理現象です。ただし、舌が常に突き出たまま戻らない、哺乳が極端に困難、呼吸が苦しそうといった症状を伴う場合は、念のため小児科医に相談してください。
Q3:外出先で赤ちゃんがぐずった時にも「べろべろばぁ」は使えますか?
A3:非常に有効な気分転換になります。道具を一切使わず、大人の顔一つで視線を奪うことができるため、電車内や待ち時間のアイスブレイクとして重宝します。公共の場では大きな声を出さず、小声で「べろべろ…ばぁ」と表情筋を大げさに動かすだけでも、赤ちゃんの注意をぐずりから逸らす効果が期待できます。
まとめ:日常のふれあいを一生の愛着へと変える魔法
「べろべろばぁ」というたった6文字の言葉と、舌を出すという滑稽な所作。そこには、大人が体面や恥ずかしさを脱ぎ捨て、我が子の目線まで降りて全力で向き合うという、純度の高い愛情の交歓が存在します。完璧な育児ノウハウや高価な知育玩具が氾濫する2026年の現代において、親の顔そのものが最高のエンターテインメントになるという原点を、この遊びと名作絵本は教えてくれます。
佐々木マキ氏が描くユーモラスな世界に身を委ね、親子で気兼ねなく舌を出し合い、顔を見合わせて笑い合う――その何気ない数分間の積み重ねこそが、子どもの心に強固な安心感の根を張り、豊かな情緒を育む確かな土台となっていくはずです。 (出典: べろべろ ば ぁ(Yahoo!ニュース))